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頻尿・夜間頻尿
(日中トイレが近い・
夜寝ているときに起きる)

頻尿・夜間頻尿とは

頻尿は、通常よりも排尿回数が多いことで、朝起きてから就寝までの排尿回数が8回以上の状態を指します。夜間頻尿は、就寝時、排尿のために1回以上起きてしまう状態です。眠ってから排尿のために起きた回数であり、布団に入ってから入眠できずにトイレに行った回数は含まれません。
頻尿や夜間頻尿は加齢によって起こりやすい症状であり、治療する必要がないケースもあります。ただし、頻尿や夜間頻尿があると、常にトイレのことが気になって行動が制限される、睡眠の質が落ちて熟睡感を得られない、昼間に強い眠気や集中力低下を起こすなど、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大きく損ねる場合もあります。また、腎臓や膀胱、前立腺、生活習慣病や心疾患などの症状や治療薬の副作用として頻尿や夜間頻尿を起こしている可能性もありますので、原因疾患の有無や内容を確かめることが重要です。また、問題がない場合も、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)への影響を考慮し、治療の必要性を判断することが大切です。
*QOL:「生活の質」と訳されます。

寝ている時のトイレは
寿命を縮める?
夜間頻尿の問題点

夜間頻尿は睡眠の質を大きく下げる症状です。睡眠の質が下がると健康へ悪影響を及ぼし、昼間に強い眠気に襲われる、集中力や注意力が低下するなど、仕事や学業、スポーツなどのパフォーマンスを下げ、深刻な事故につながりかねない症状を起こす可能性があります。
また、夜間頻尿に関する追跡調査によると、夜中に2回以上トイレに起きる場合、転倒による骨折リスクが高く、誤嚥性肺炎などの合併症による死亡リスクも高くなることが指摘されています。夜間頻尿自体が寿命を左右するのではなく、夜間頻尿が重大な疾患のサインとして現れているケースや、深刻な事故につながる可能性があることが大きな問題となります。
健康で快適な生活を送るためには、上質な睡眠が欠かせません。頻尿や夜間頻尿でお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

夜間頻尿の原因

加齢、肥満・高血圧・糖尿病、心疾患、前立腺肥大症、うつ病などがあると、夜間頻尿を起こしやすい傾向があります。
夜間頻尿は主に「多尿・夜間多尿」「膀胱容量減少」「睡眠障害」に分けられ、中でも「多尿」は17%、「夜間多尿」は33%、「膀胱容量減少」は16%、「夜間多尿と膀胱容量減少が併発している場合」は21%と言われています。
また、多尿・夜間多尿を合わせた「尿量異常」は71%、「膀胱容量減少」は37%であり、大半は尿量異常が原因となっていることがわかります。

多尿と夜間多尿

健康な成人の1日の尿量は約1000mL~1500mL/日とされており、多尿は2500~3000mL以上(40mL/kg体重以上)の場合とされています。
多尿や夜間多尿の主な原因は、過剰な水分摂取、脳の口渇中枢異常による多渇症、薬の副作用、飲酒、抗利尿ホルモンの分泌異常である尿崩症などがあり、高血圧、糖尿病、腎機能障害、浮腫、睡眠時無呼吸症候群などが関与している場合もあります。
夜間多尿は就寝中の尿量が多い状態であり、1日の尿量の総量の中で、夜間の尿量の割合が多い状態です。この割合は年齢によって異なり、65歳以上では33%以上、65歳未満は20%以上となると夜間多尿とされます。

膀胱容量の低下

膀胱は排尿までの間、尿をためておく機能を担っています。様々な疾患で膀胱の筋肉に大きな負担がかかると筋肉が硬くなって膀胱が十分に膨らまなくなり、容量が減少して頻尿や夜間頻尿の原因となる場合があります。また膀胱への負担によって尿意を感じる神経に異常が生じて尿意に過敏な反応を示すようになり、頻尿や夜間頻尿につながることもあります。主な原因疾患には、過活動膀胱や間質性膀胱炎などがあります。また、男性の場合には前立腺肥大症が原因になっているケースも多くなっています。

睡眠障害

なかなか寝付けない、すぐ目覚めてしまうなど、睡眠障害も夜間頻尿の原因になります。眠れない時間に尿が産生されてしまうこと、眠りが浅くなると尿意を感じやすくなることで、夜間多尿や夜間頻尿を起こします。眠りが浅くなることで尿意を感じやすくなり、尿意によってさらに眠りが浅くなってしまうという負のスパイラルが起こりやすいので、早めに適切な治療を受けて改善させることが重要です。
なお、睡眠時無呼吸症候群も夜間頻尿を引き起こすことがあります。睡眠時無呼吸症候群は自覚症状が乏しいのですが深刻な疾患であり、早急に適切な治療を受ける必要があります。身近な方から激しいいびきを指摘された、または熟睡感がなく日中の数注力や注意力が低下しているなどの症状がある場合には、できるだけ早く睡眠時無呼吸症候群の検査を受けるようお勧めしています。

夜間頻尿の
診断方法・必要な検査

夜間頻尿は、泌尿器科疾患をはじめ幅広い疾患によって現れる症状です。また、加齢や飲酒などの生活習慣、服用している薬などの影響で夜間頻尿を起こしているケースもあり、その場合には生活習慣の改善や薬の処方の変更などによって解消できる場合もあります。
当院では、症状や経過、お悩みの内容、既往症や服用している薬、年齢、ライフスタイルなどを考慮した上で、患者様に合わせた検査を行い、原因を確かめていきます。

排尿日誌

夜間頻尿の原因を見極めるために有効なデータを集める方法です。尿量を計測する尿カップに排尿し、日誌帳に計測した尿量と排尿した時間のほか、飲んだ水分量も記録します。日誌は最低2日分の記録が必要であり、できれば3日間記録するとより正確な診断に役立ち、効果的な治療につながります。

既往歴、併存疾患、
服用している薬、身体所見

夜間頻尿を起こす原因疾患として、高血圧、糖尿病、心不全、脳血管障害がないかを確認します。また、様々な疾患で処方される治療薬には、頻尿の副作用を起こすものがありますので、そうした薬を服用されていないかもチェックします。さらに、激しいいびき・十分な睡眠時間でも熟睡感がないなど、睡眠時無呼吸症候群が疑われる症状がないかも確認します。さらに、足のむくみは就寝時に横になると足にたまっていた血液などの水分が血管の中に戻り、腎臓に運ばれ、尿量を増やす原因になりますので、足のむくみの有無も確かめます。

尿検査

尿検査は、尿潜血や膀胱炎の検査としてだけでなく、タンパク尿や尿糖の有無を調べることで糖尿病や腎臓病の可能性も把握できる検査です。尿検査で膀胱炎の疑いがある場合には、炎症を抑える治療を行って経過を観察し、必要があれば尿培養検査を行った上でより効果的な治療につなげます。

画像検査

腹部超音波(エコー)検査は、腎臓や膀胱の状態をリアルタイムで観察でき、尿路結石や膀胱腫瘍をはじめとした頻尿・夜間頻尿の原因となる疾患の発見に役立ちます。男性の場合は、頻尿や夜間頻尿の原因となる前立腺肥大の有無をチェックする検査として行われることもあります。女性の場合は、頻尿や夜間頻尿の原因となる子宮筋腫による膀胱圧迫の有無を確かめることもできます。
胸部レントゲン検査では、頻尿や夜間頻尿の原因となる心不全の有無を確認します。なお、脳や脊髄の異常によって頻尿や夜間頻尿を起こしている疑いがある場合には、連携する高度医療機関をご紹介し、MRI検査を受けて頂きます。

血液検査

水分摂取量が多くないにも関わらず尿量が多い場合は、血中のカリウムやカルシウムの数値を確認するために実施します。また、血液検査では、頻尿・夜間頻尿の原因となる心不全・腎不全、糖尿病、高血圧などの有無を確かめるためにも有効です。さらに、男性の場合には、血液検査でPSA値を調べることで前立腺がんの有無を確かめることもできます。

尿流量測定検査(Uroflowmetry:ウロフロメトリー検査)・
残尿測定検査

排尿状態を詳細に把握するための検査です。計測機器が搭載された専用のトイレで普通に排尿することで尿量・勢い・排尿時間などを正確に測定できる尿流量測定検査(ウロフロメトリー検査)と、超音波やカテーテルを使った残尿測定検査があります。

夜間頻尿の治療

飲水量指導、生活習慣の見直し

多尿が原因となっている場合には、排尿日誌をつけ、水分摂取量を調節します。利尿効果のあるカフェインやアルコール、塩分などを過剰に摂取している場合は、その制限が有効です。

運動療法、行動療法

夕方から夜にかけて筋肉トレーニングや有酸素運動を行うと、汗によって体内の水分が排出されて夜間尿量が減り、夜間頻尿の解消に役立ちます。半身浴、足ツボ刺激などで血流を改善するのも有効です。
また、下腹部を温めると膀胱の筋肉の過度な緊張がゆるみ、膀胱容量が拡大されやすくなります。さらに、足がむくみやすい場合には、日中に弾性ストッキングを履いて過ごすことで足に余計な水分がたまらなくなり、就寝時の尿量を抑制できます。

薬物療法

前立腺肥大症による頻尿・夜間頻尿は、前立腺肥大の治療によって残尿が減少したり、膀胱が拡大することで解消につながります。また、過活動膀胱などによる尿意過敏や、膀胱の筋肉の過度な緊張がある場合には、抗コリン薬などの処方が有効です。また、夜間に尿の産生を抑制する抗利尿ホルモンであるデスモプレシンは子どものおねしょ治療に使われてきた薬ですが、現在では成人男性の夜間多尿治療にも有効であることがわかっています。
なお、夜間頻尿が起こる原因は患者様によって大きく異なり、原因が同じでも効果のある薬が違うケースも珍しくありません。
当院では、患者様の夜間頻尿の原因をしっかり把握した上で、適切な治療法をご提案します。再診時には再度お話を伺いながら処方を微調整し、最適な処方を行います。原因が複雑に絡み合った病態のため効果が出るにはすこしお時間がかかる事があります。気になることがありましたら些細な内容でもお気軽にお伝えください。

頻尿・夜間頻尿の
症状がありましたら、
お気軽にご相談ください

頻尿・夜間頻尿の症状がありましたら、お気軽にご相談ください高血圧・糖尿病、心不全、内分泌異常などによって頻尿や夜間頻尿が生じている場合には、必要があれば内科をはじめとした他診療科と連携した治療を行います。また、肥満などで気道閉塞を起こして発症している睡眠時無呼吸症候群の場合には、CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)による治療で高い改善効果を期待できます。
頻尿・夜間頻尿の原因は患者様ごとに異なり、複数の疾患が関与しているケースもあります。いずれにしても、原因疾患の適切な治療を受けて上質な睡眠をとれるようになれば夜間頻尿も改善に向かいやすくなります。上質な睡眠がとれるようになれば、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)も向上し、将来の健康維持にも大きく役立ちます。頻尿や夜間頻尿のお悩みがありましたら気軽にご相談ください。